バッキンガムから車で二十分、州境を越えてオックスフォード州に入ったところにフローラ・トンプソンの生まれ育った小さな村、本ではラークライズ、実際にはジャニパーヒルという、村とも呼べないほどに小さな集落があります。19世紀末のフローラの子供時代にはここに小さな家が三十軒、イン(居酒屋)が一軒あったと書かれていますが、今は家は十八軒、かつてのインは建物だけ残っていました。
It was about 20 minutes driving from Buckingham to Lark Rise (Juniper Hill), Flora Thompson's hamlet. There are only 18 houses today, though there were 30 in her childhood, the last 19th century.
遠くから見たラークライズです。昔、インの主人と石工職人だったフローラの父を除けば、村の男たちはみな貧しい小作農でした。当時は子沢山でしたから、村の人口も200人は越えていたでしょう。今は住んでいるのはほとんどが悠々自適の退職後の夫婦が多く、僅か40人足らずの人々しかいないことになります。
There must have lived over 200 people then. But today most residence are retired couple, so the population may be less 40.
周囲は見渡す限り、麦畑です。麦が実ると「村はまるで金色の海に浮かぶ小島のようになった」のだそうです。
Corn fields are sorronding the hamlet.
村の端っこに”エンドハウス”と呼ばれたフローラの家があります。庭に面した戸口は今は勝手口ですが昔はこちらが玄関で、フローラは「その家は遠くから見ると他の家に背を向けて、まるで畑に向かって駆け出していきそうに建っている」と書いています。ご覧のとおりフローラの家は二軒を合わせた形で、おそらく左の片側だけしかない大方の他の家よりは恵まれていたはずですが、それでも決して広くはありません。クイーニーの家が丁度陰になっています。
Flora's cottage was called the "end house". The entrance opening to the garden used to be a front door. She describes, "a little apart, and turning its back, on its neighbours as though about to run away in to the fields".Queenie's cottage is back of this house.
しかし周囲の空間は豊かです。本来の庭はおそらく大きな木や小屋の見える辺りまでなのですが、その向こうはアロットメントと呼ばれる借りて自由に菜園にできる共有地ですので、フローラの父親もどこまでも好きなだけ使って良かったのでしょう。
Maybe the garden ends aroud the barn. But it is expanded into allotment.
最初の遠景の裏側になる村の入り口からの景色です。遠くに小さく見える林の辺りに大きなお屋敷があり、1887年ヴィクトリア女王の戴冠五十周年記念式典が盛大に催されたときはそこがこの辺りの会場になりました。産後間もないフローラの母も乳母車に赤ちゃんを乗せ、子供たちを連れて世紀の祭典に出かけて行きました。その年を境に時代は変わった、とフローラは『ラークライズ』の最終章に書いています。
You may see a tiny woods beyond the field. There used to be a grand Park where the Queen Victoria's Jubilee was celebrated in 1887. In the last chapter of "Lark Rise", she wrote "After the Jubilee nothing ever seemed quite the same". It must have been a turning point of the period.
これは博物館に展示されていた1950年頃のフローラの家です。その頃、つまりフローラの時代から半世紀後に村を訪れたマーガレット・レーン(日本ではベアトリクス・ポターの伝記作者としてしか知られていませんが、英国ではかなり有名な著述家です)という女性が、フローラの描いた頃と殆ど変わっていないように思われる、と書いています。それからまた半世紀たったわけですが、変わったのでしょうか、変わっていないのでしょうか。
This is a photo of the "end house" in 1950, a half century after Flora's days. Margeret Lane visited the hamlet around then. To her the hamlet didn't seemed to have changed much since Flora's "lark Rise". And another half century has passed away since then.
6 comments:
Great photos! Thank you so much for sharing your travels on the blog.
A really small village.The countryside seems to be nearly unused.
Interesting to see the developement or lack of developement.The time has gone in a way.
Thanks.
Ulla
It seems almost dreamlike to see Flora's actual house; it is hard to believe that it still stands. Thanks for the photos--I remember Lark Rise with pleasure, Hideko. I stand ready to work on another Lark Rise block at any time!
Lynn
SoCal
Hi Lynn, it still stands and is lived in a nice retired people. With their favor I even could see Flora's small bedroom in upstairs. I imagined how it was crowded when she shared the room with her younger two sisters. It was a very fruitful trip. It's so kind of you. I feel like making another "Lark Rise" block. Thank you very much.
Hideko
私にとって、いつ訪れることができるのか、訪れることさえ難しいだろうと思われる素敵な場所に、案内していただき、ほんとうにありがとうございます。(英子さんの記事は、いつも、私にとって、もったいないくらいで・・。)実際に、当地を歩かれたことは、翻訳をすすめていくのにも、得るものは多かったことでしょうね。何かの色を表わすのにも表現しやすくなったのでは・・?
本当に百聞は一見に如かずで。地理とかサイズとか色とか、想像していたのとは少しずつ違っていました。忘れるので、取りあえずはせっせとカメラのシャッターを切っていました。土についての表現もありましたから畑の土まで写真撮りましたし。私にしかわからないものが一杯あります。
Post a Comment